2025年、日本全国でクマの目撃・出没、そして人身被害の報告がこれまでにないレベルで相次いでいます。環境省の発表によれば、4月から10月の間に報告されたクマの目撃件数は 36,814件 に達し、前年同期のほぼ2倍。 また、同期間だけで 13人が死亡、217人以上が負傷 ―― 過去最悪の記録となっています。
いまや「山奥だけの問題」ではありません。住宅地、公園、スキー場、駅近く、観光地――人が日常的に集まる“人里近く”での出没も報告されており、状況は深刻です。
このような異常な頻度には、気候変動や自然環境の変化、里山の減少、食料となるどんぐりやブナの実の不作など、複合的な背景があると考えられています。特に、冬眠前の“食いだめ期”にあたり、自然の食料が不足したクマたちが人里へ食べ物を求めて下りてくる――そうした構造的な原因が指摘されています。
この状況を受け、自治体や国はこれまでにないレベルで対応に迫られています。例えば、北東 日本の 秋田県 では、山間部だけでなく住宅地にまで出没が拡大し、ついには 自衛隊 や猟友会と連携してトラップの設置やクマの捕獲・駆除作戦が展開されました。 また、国も“クマ対策”のために数十億円規模の予算を追加し、安全装置の設置やモニタリング、通報体制の強化を始めています。
一方で、専門家や自然保護を訴える団体からは「単なる駆除」ではなく、そもそもの自然環境の変化や人間の住環境の在り方を見直すべき、という声もあがっています。安易に「害獣=駆除」の構造だけを進めてしまえば、生態系のバランスや里山の将来にも影響を及ぼす可能性があるという指摘です。
このような状況は、私たちの日常にも大きな影を落としています。たとえば、秋のハイキングや山菜採り、キノコ狩りなど“自然を楽しむ”アウトドアの機会が減り、「安全かどうか」の不安から、外出やイベントの中止が相次いでいます。
また、通勤途中、買い物先、住宅街――普段気軽に暮らしていた場所が“注意”を要する場所になることも。特に子どもや高齢者、ペットを連れた人にとっては、これまで以上に警戒が必要です。
個人レベルでも、今は「クマよけベル」「鈴」「ラジオや音の出る道具」を携帯するなど、出会いに備える“心構え”が重要だと強く感じます。