AIJ事件 Ⅱ

 

金融の業界人には、概して世間相場より遥かに高い給料を取っている。

それに見合う働きをしているのかと言えば、決してそうではない。

あの給料に見合う程の高い生産性を上げている人物など、ほとんどいない。

じゃあ何故、生産性に見合わない高い給料が支払われているのか?その理由のひとつが不正の防止ではないかと思う。

内部の不正を防止するのは、とても難しいんです。

「これだけ高い給料を渡しておけば、世間相場から見ても十分過ぎる位だから、わざわざリスクを冒してまで不正はしないだろう」という経営者の安易な考えがある。

が、この方法は、これまである程度は機能していただろう。

勿論、完全ではありません。

世間に知られていない不正、表に出ていない不正、会社内で握りつぶされたり、もみ消された不正は山程ある。

信用が第一の金融業にとって、スキャンダル、不祥事が発覚するのは避けたいはずだから「発生」しても「発覚」するのは最大限避けたいと言う事。

じゃあ不正は何処で発生するのか?

最も不正の発生率が高いのは、幹部クラス(部長職レベル)。

発生件数で見ると、中間管理職いわゆる課長、係長クラスや、一般社員、非正規雇用などです。人数も多いことからこのクラスが最も多くなるが、発生件数を人数で割った発生率でみると、幹部クラスが最も高くなる。 

中間管理職及び一般社員・アルバイト等クラスで発生する不正は、会社の備品を持ち出したとか、接待交際費の領収書をごまかしたという程度の、可愛いものです。

これらの不正は、会社の仕組みや制度、そしてある程度高い給料で、防止されます。

反面、金額の大きな不正とは、横領と贈収賄、そしてインサイダー取引等々。

これをするには、ある程度の経験と権限が必要になってくる。

その権限を持っているのが、幹部クラスだということです。

金額が大きくなれば、リスクを冒す価値も大きくなってきます。

この幹部クラスの不正は、金融業としては公表しづらいもので、いろんな手立てを駆使して、不正された金額を穴埋めし、損失を先送りしてきたのを、何度もテレビや新聞で見てきた。

今回のようにマスコミに出てきたのは、氷山の一角に過ぎません。

目に見えていない不正や、まだ知られていない不正は、はるかに多く発生している。

その目の前のニンジンを我慢できるほど、人は善良でも愚かでもないということなのか?